ゲーム

『シャドウ・オブ・モルドール』不要な要素を削った洗練されたゲームデザイン

発売前から気になってはいたけど中々時間がなくて今更プレイ。想像以上に面白くてハマった。

シャドウ・オブ・モルドール(Shadow of mordor)はロードオブザリング(LotR)の外伝ゲームだ。

目指すべきゲーム体験がLotRの文脈を守りつつ、復讐の鬼と化して「オークをめった殺し」にすることのみ。

オークに善人なし。慈悲はない。

映画のLotRで圧倒多数のオーク軍に英雄たちが華麗に捌いていくのに心躍った人はハマると思う。

戦闘は剣戟、ステルス、射撃の三つ。どれもよく出来ている。以下はゲームデザインの話で、ゲームクリア後に読むのを推奨。

 

ない要素

ひたすらにオークを殺す「戦闘」がメインで、RPGの要素は思い切ってなくしている。そのため、ゲームデザインはシンプルで洗練されている。

何の要素を足すのかより、何を体験させるべきか、その体験の阻害になるような何の要素が必要ないかを考えるほうが重要である。昨今の優れたゲームデザインのゲームはこれをちゃんと守っている。

  • 防具の概念がない。防御値も目に見えて存在しない。
  • 武器もバリエーションが存在しない。最初から持ってる剣・弓・短剣のみ。
    強化もない(クエストによって武器の特殊技が開放できるが実質アビリティ枠)
  • レベルがない
  • 目に見える攻撃・防御値もない。※ルーンの条件によって上がるのもある
  • 保持できるアイテムがない。
    薬草は一律体力全快、その場で食べる。矢は拾えるがスキルで補充できるうえに種類はない。
  • スタミナがない
  • 落下死なし
  • 難易度調整なし
  • 生産要素なし

敵も自分もただ単に数値が上がるという部分がHPぐらいしか存在しない。あくまでスキルバリエーションが増えて強くなるというシンプルなルール

ただ単に与・被ダメージの上下する難易度の調整がなくて、そもそもこの与・被ダメージの調整要素がゲームの根幹から要らなくない?と省いたのが潔い。

アクションRPGならある要素が実はただ単に面倒くさいだけで、アクションの体験の濃さを薄めるだけなら、一度見直す必要がある。※一手間かける面倒くささが面白い時もある

強化する要素

プレイヤーを強くする要素は以下の三つ。

  1. ボス級の敵からドロップする装備につけるルーン
  2. 主にプレイヤーのアクションを拡張するアビリティ
  3. HPや弓の装填数、ルーンのスロット数増加などの基本的なステータスアップの属性
stats

ちょっと初見でわかりにくいのはアビリティは段階(Tier)に分かれていて、段階を開放するにはパワーのポイントが必要。パワーは敵の権力闘争に介入するとたくさんもらえて、自分が死亡しても貰える。

つまり経験値の代わりにポイントがアビリティ属性パワーで三つある。

これの意味は以下の三つ。

  • ミッションによってもらえるポイントが違うので色々と遊んでみる動機づけ
  • ミッションのボーナス課題達成のモチベーション
  • 特に課題達成できなくても別の部分で成長できる

戦闘中のリソース管理

戦闘のアクションに集中できるよう、プレイヤーが気にすべきリソースの要素が絞られている。

  • 剣戟中はHPとコンボの数のみ
  • ダメージ量の表示はない
  • モブ敵のHPは非表示
  • 弓は構えた時のスロー時間量(フォーカス)と弾数
    照準にリソース量が表示される優れたHUDデザイン
  • ステルスは敵の警戒度とステルスキル可能かどうか。ともに表示が赤くなる

剣戟・弓・ステルスでそれぞれ気にすべきリソースの要素は2つまでであって、これが没入感を阻害しない。

HUDのデザイン

照準の左側白いゲージがフォーカス(スローの時間)、右が弾数。
このデザインだと中央のみ見ればいい。

HUDArcher

ミニマップと一体になってる。赤ゲージがHP、白がフォーカス、水色が弾数

HUD
敵のHP表示はないが、三角はステルスゲージ、赤くなると発見される。
普段は非表示なので没入感を邪魔しない。

操作の即効性

爆発物を爆破するためにいちいちインベントリ開いて火矢を装備して撃つなんて面倒なことは一切ない。爆発のアビリティ取って、爆発物を狙撃するだけの即効性。

Explosion

弓の切り替えも右クリック長押ししている間だけで速いし簡単。短剣の持ち替えもステルス中のみ自動でしてくれるので気にしなくていい。

フリーフローコンバット

剣戟戦闘ではバットマンシリーズのようなフリーフローコンバットシステムが採用されている。

アクションのデザインの基本は位置取りとタイミングだ。

しかし、3Dゲームの弱点としては奥行きの間合いが認識しづらく、敵が斜めから攻撃してきたりの工夫でカバーされている。慣れたプレイヤーにはどうってことはないが、カメラ操作しながら位置取りして戦闘するのはかなり難しいことだ。

そのためカメラ操作を減らすよう、ゼルダシリーズのZ注目などのロックオンシステム、攻撃にニュートラル状態だと一番近い敵のほうを向いたり、移動攻撃の回転が補正かかる半自動ロックオン(ドラゴンズドグマ)などが採用されている。

フリーフローコンバットはありとあらゆる状況下でも流れるようにコンボが繋がる仕組みだが、半自動ロックオンよりさらに自動化して、カメラの回転も必要ないし、間合いの詰めも自動でやってくれるので気にしないでいい。

シャドウオブモルドールはかなり自動追尾が強くて、自分の攻撃したい対象に反するところもあるが、間合いが完全自動なので、純粋に位置関係と強力なスキルを放つタイミングのみにアクション要素が集約される。

防御のタイミングやこちらの攻撃放つタイミングはゆるゆるで、これぐらいのがストレスもなく遊びやすい。

light

なぜ突き詰めてここまで要素をシンプルにしているのか。おそらくコンボからのスキル派生が多くて、敵も密集して存在するから操作自体は忙しく複雑だからだと思う。

射撃

弓による射撃は即着系。狙ったポイントに瞬時にダメージが入るので、偏差射撃はない。弓を構えたら自動でスローになるので当てやすい。レスポンス良好でヒット感がいいので気持ちいい。

ヘッドショットがあって成功すれば追加ダメージがある。アビリティを取れば足撃った時にその場に拘束できる。

優秀なレベルデザイン

マップは2マップのオープンフィールドでやや広め。フィールドのデザインとしては戦闘以外のゲーム要素がないので密度はあんまりない。

しかし、ステルスや射撃はレベルデザインの良し悪しがゲームデザインに直結してしまうシューターでのノウハウが存分に発揮されている。開発元は名作FPSのF.E.A.RのMonolith Productions。

StealthHigh

密集した敵を混乱して散らす蜂の巣落とし、肉落として、モンスターを呼び寄せたり、捕獲されたモンスターの鎖切って荒らさせたり、樽や焚き火などの爆破、酒に毒入れて毒殺したりのオブジェクト利用が豊富。

高低差がかなりあって、落下ダメージもないし、掴み登りでかなり自在に高く登れるので、高所から引きずり落としたり、頭上から一刺ししたり爽快。
StealthHighKill

AI

基本は一対多数になるので、敵の個別のAI自体は基本はシンプルでいい意味でバカ。

しかし、集団戦闘時における立ち回りや攻撃順の決定を下すメタAI部分が優れている。賢さよりも不自然に見せない、ゲームプレイを理不尽に阻害したりしない。増援を呼んだり、近場のボスがチャンスと見て割り込んできたりもする。

味方につけたオークは指示を出すまで周りに馴染んで、普通のオークとは敵対しないが、警報鳴らしにいくオークを阻止したり、近隣で戦闘はじめると加勢したりする。

ネメシスシステム

プレイヤーが死ぬとプレイヤーを殺したオークが強化され出世する。オーク内で闘争があり、打ち負かされて失脚したり出世したりする。敵側に育成要素がある特徴的な仕組みだ。

また推しオークを洗脳して出世させ、護衛につけて下克上したり、他の派閥に喧嘩売ったりできる。高性能なオークほどいいルーンを落とすので、育成してから刈り取る、畑の作物みたいに扱うこともできる。

特徴や性格、外見が異なるプロシージャに生成されるオークは個性的で面白い。

BossInfo

ボス格のオークはそれぞれ特性や弱点が違う。目指せオークマスター

情報戦

敵軍のオーク隊長(ボス)の情報は一覧になっているが、最初は全く未知である。
敵を尋問することで隊長の情報を得られる。

UnknownBoss

モブ敵は小隊長の顔と名前しか分からず、「虫」と言われる伝令役は小隊長の特性や弱点と軍隊長格の顔と名前、小隊長は軍隊長の特性と弱点を知っている。持ってる情報に格差があるのがリアルである。

またこれらの情報を把握していると段違いにやりやすい。情報が重要な要素であると戦の雰囲気が出る。

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

導入がうまい

息子の剣術指導、奥さんとのイチャラブアクション、鬼気迫ってのステルス。チュートリアルとストーリーがうまく絡めていて没入感を阻害しない。

親切すぎず突き放しすぎず。

それなりに複雑な操作だが、スキルは段階を追って増えていくし、必要なタイミングでヒントが表示されるので問題ない。

ダメな要素

非戦闘時の動作がもっさり

歩きやターン、拾う動作も遅すぎてイライラする。体傾けてから歩き出すのはさすがにやりすぎである。

これらのレスポンスの悪さは0-10段階だとすると10。リアリティとの兼ね合いもあるので0が最適ではないにせよ、せめて5ぐらいにして欲しかった。

逆にダッシュと加速、スニークダッシュ、通常の戦闘はレスポンス良好なので、ギャップがひどいのもある。

ネメシスシステムが本領発揮してない

後半入ってから導入されて、後半は失速気味なのであくまでおまけ程度になってるのはちょっと残念。

一旦安定的な基盤作っちゃうと中々揺るがないので、もう少しモブの下克上が強くて良かった。ギリギリの小競り合いが楽しみたかった。敵側に介入して敵を育てるのは他にはない意欲的な仕組みなので、これベースに拡張すればかなり面白いアイディアになると思う。

後半から特に終盤は失速気味

コレは他のゲームでもよくあるが、予算ないとか時間ないとか考えられる。

少なくとも決戦はオーク五人衆+ラスボス入れた総力戦で、こっちより上手で
編成次第ではかなり苦戦するぐらいでもよかった。そのあとラスボスがこちらの味方全員ふっ飛ばして、1対1の決戦をして、最後のフィニッシュでQTEでよかった。序盤の難度の高さ考えるとぬるすぎて、ちょっと拍子抜け。

レベルカーブが微妙で序盤が最難関で後半の戦闘ブランドを手に入れてからかなり難度下がって無双しすぎてしまうのでダレてきてしまう。

戦闘自体は面白いものの基本は戦闘しかないのでここはもうひとひねり欲しかった。単に数値上の難度上昇でないゲームデザインだから尚更。

まとめ

詰めの甘さこそあるものの全体的に完成度が高く、レベルデザイン、剣戟、ステルス、射撃、どれをとっても昨今の洋ゲーらしい没入感を邪魔しない洗練されたシンプルなゲームデザインが詰まってる。ゲームを作る上で参考になると思う。

また純粋に遊んでて楽しいし、久々に夢中で遊べるゲームだった。やっぱりゲームは楽しい。