Blender2.83 LTSが先日リリースされました。
1250以上のバグ修正がなされ、新機能はVRのサポート、煙や爆発といったボリュームデータOpenVDBインポート、OptiXビューポートのノイズ除去、物理対応のクロス(布)ブラシなど多数あります。
Blenderのバージョンについて
今回の更新はLTS版(long term support=長期サポート)です。Blenderはいままで0.01単位ずつバージョンアップしてきましたが、今後はバージョンアップの仕方が変わります。
LTS版であるバージョン2.83は2年間サポート継続でバグ修正やセキュリティ更新されます。そのため企業や長期プロジェクトで採用しやすいです。LTS版は今後1年に1回リリースされます。
また、LTS版でない従来通りのバージョンもあります。今後新機能については2.9ベースに搭載され、3ヶ月単位でリリースされていきます。
- 2020年08月 2.90
- 2020年11月 2.91
- 2021年02月 2.92
- 2021年05月 2.93(LTS)
- 2021年08月 3.0
新機能
詳細はリリースノート(英語)を参照してください。気になったいくつかをピックアップします。
クロスブラシ
スカルプトに物理演算での布シミュレートができるクロスブラシが実装されました。公式の動画みたく軽快には動かないですがシワを作るにはかなり便利。
[video src="https://wiki.blender.org/w/images/2/21/Clothbrushdemo.mp4" /]パフォーマンスの向上
以下のパフォーマンスが向上しています。
- アンドゥ 大幅に高速化
- グリースペンシル 描画も滑らかに
- クロスシミュレート 15~20%アップ
- 流体シミュレート
Cyclesの適応サンプリング
ノイズが少ない領域のサンプル数を減らして10~30%程度高速化できます。
適応サンプリングの使い方
レンダープロパティでレンダーエンジンを「Cycles」にした状態で、サンプリング→適応サンプリングにチェックを入れます。
ノイズしきい値と最低サンプル数は0の場合はアンチエイリアスの値を参考に自動設定されます。
Optixのビューポートデノイズ
GPUがNvidiaのGeForce RTX以降(RTX2060など)、OSがWindows/Linuxであれば、Optixのビューポートデノイズ機能が使えます。Cyclesのビューポート上のプレビューレンダリングが高速でキレイになります。
レンダープロパティのレンダーエンジンがCyclesの状態で、サンプリングの項目の「Viewport Denoising」ドロップダウンを「OptiX AI-Accelerated」にします。この機能に対応していないGPUだとそもそも選択肢が出ません。
ウエイトペイント時のKキーショートカットの追加
頂点グループのロックのパイメニューが表示されます。別の頂点グループへの誤塗り防止に便利。
Blender2.83の注意点
日本語化
初回起動時のクイックセットアップから日本語化できるようになりました。しかし、この場合は新規データも日本語化されてしまいます。データ名に日本語(マルチバイト)が含まれるとアドオンや別のソフトで不具合の原因になるので避けましょう。
データの命名は基本的に英語にしてください。Blenderに限らず海外中心で開発しているソフトウェアすべてに言えます。
対処方法
左上メニューから編集→プリファレンスを選びます。
インタフェース→翻訳→新規データのチェックを外します。
ブラシ設定のリセット
バージョンアップで変更のあったブラシは、前バージョンから設定を引き継ぐと最適な動作を得られないのでブラシ設定のリセットが必要です。(たぶん)
リセットが必要なブラシは改善されたクレイブラシ、クレイストリップブラシ、レイヤーブラシだと思います。
The implementation of the sculpt brushes changed in Blender 2.81, so if you use the 2.80 brush settings you won't get the optimal behavior that was designed for them.
You can reset to factory settings to get the correct defaults or reset each brush one by one: https://t.co/EJg94rOkgB pic.twitter.com/6cpkUheodv
— Pablo Dobarro (@pablodp606) November 22, 2019
対処方法
スカルプトモード中にプロパティウィンドウの一番上のアイコン「アクティブツール」の設定にあるブラシの下矢印を押して「ブラシをリセット」をクリック。
これをブラシごとに行う必要があります。ブラシ全体リセットする方法はないようです。
頂点マージ機能がAlt+MからMキーに変更
頂点マージのショートカットキーがAlt+MからMキーに変更されました。より押しやすく分かりやすくなりました。MergeのMですから覚えやすいですね。Alt+Mはマージと反対に分割になりました。
ライトキャッシュのアップデートで再ベイクが必要
ライトキャッシュ機能が仕様変更され八面体マップからキューブマップにベイクするようになりました。Blender2.83以前のファイルに含まれる反射キューブマップは再ベイクする必要があります。
対処方法
レンダープロパティ→間接照明→「間接照明をベイク」または「キューブマップのみベイク」
流体のベイクボタンを表示する
流体のベイクボタンはデフォルトでは表示されていません。デフォルトでキャッシュの方式が変わったためです。
対処方法
物理演算プロパティ→(流体の設定をする)→キャッシュ→タイプをリプレイからモジュールに変更します。設定に「データをベイク」が表示されます。